映画: 神々のたそがれ 映画というよりもはや体験

「神々のたそがれ」見てきた。本当に不快で正直途中で出たかった。我慢して最後まで見た自分を褒めたい。ネタバレはせずに、(というかする必要がない)つらつらと思ったこと。


『神々のたそがれ』予告編 - YouTube

あらすじ

公式から抜粋。非常にわかりやすい。

人間が、神になる惑星。 舞台は、とある惑星の都市アルカナル。この惑星は、地球から800年ほど遅れた発展を­遂げており、中世ルネッサンス期を迎えているかのようであった。そこに目を付けた地球­人たちは、科学者・歴史家らの調査団を派遣した。しかし、最初の潜入から20年が経過­しても、そこで繰り広げられるのは、圧政、殺戮、知的財産の抹殺であり、文化発展の兆­しは全く見られない。地球人の一人、ドン・ルマータは、未来から知識と力を持って現れ­た神のごとき存在として惑星の人々から崇められているが、政治に介入することは許され­ず、ただただ権力者たちによって繰り広げられる蛮行を傍観するのみであった…。

映像

最初に書いてる通り本当に不快。よく雨が降るところだから地面は基本的に泥であちこち泥まみれで、人はそこら中に糞尿をばらまくし、衛生観念もあまりないから怪我も放置。血をだらだらたらしていて、そこら中に唾、痰を吐く。常に争い事が起きてるからみんな甲冑みたいなの着ててどつきあってる。貧しいからよくわからない食べ物やらなんやら押し付けてくる。あとこれは完全に嫌がらせだと思うんだけど、若い女が全然出てこない。*1このせいで汚いおじさんばっか見させられる。

こうした不快なオブジェクトばかりに目がとられがちだけど、質というか技術の点では本当に素晴らしい。エンドロールにKODAK, ILFORDの文字があって素晴らしい安心感と喜びがあったんだけど、そういうのは置いといて、頻繁に現れる雨のシーンは強く「七人の侍」を思い起こさせる。霧の時の線が甘くなる質感とかもたまらない。そういった淡い線の中から一点して血や内臓の出るようなシーンではぬらりとした質感、適度なシャドーからのハイライトがあったりで現代の技術で丁寧に仕上げているなあと思う。日本国外の映画でこんなモノクロの丁寧な映画は感覚ではあまり見たことなかった。

カメラワークも非常に独特で自分も主人公の従者のごとき視点で最初から最後まで進んでいく。引きの画はかなり少なく、視線は完全に登場人物のそれ。手前に遮蔽物があったり、一般人がジロジロ見て来たり、街の中では複数のレイヤーで事が起こっている。描かれているのは「主人公とその周りで起こっていること」ではなく、「世界の中の主人公とあなた、その周り」だ。

内容

ほぼない。これは上記映像を映画館という閉鎖空間で普通の映画よりも長い3時間という時間を費やされて行われる体験だ。こうして人間のどうしようもない姿をいやというほど見せられ、嫌悪感を催してはじめて自分が「野蛮」に対しどう感じるのかをあぶり出される。「神になるのは難しい」という言葉(Hard to Be a God 原題でもある)をどう感じるか、っていうとあんまりキレイ事は言えなくなると思う。

神になるのは難しい?

元から同意の意見だし、最後のオチ、というか結論は「言いたかったのはそんなことかよ!」ってなる。だけど、それを問うための3時間は自分の返答にかなり重みを持たせる。同時に人間が本来的に持ってる悪い部分もについても改めて考えさせられ、「あー、善く生きよう!」とか思った。

人に薦める?

薦めない。

*1:野蛮ゆえ、若い女が外を出歩くとすぐに乱暴されるという背景があるからかもとも思った。